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イリハム・トフティ氏の無期懲役が確定 ウイグル問題を改めて考える

11月21日に、NHKオンラインが「ウイグル族擁護の研究者 無期懲役確定」と報じましたが、1審に続き、2審でも無期懲役の判決が下ったことで、刑が確定しました。この判決に対し、「米 ウイグル族擁護の研究者の釈放求める」(NHKオンライン、11月22日)と、アメリカは批判の声明を出しています。そもそも、イリハム・トフティ氏は何を訴え、今回の無期懲役判決を受けることになったのでしょうか。ウイグル族を巡る問題を考察した記事とあわせて、ご紹介いたします。

無期懲役の刑が確定したウイグル族経済学者 イリハム・トフティ氏(写真:The New York Times/アフロ)

ウイグル族学者は何を訴えたのか 新疆政策批判で異例の無期懲役判決
「私はウイグル社会と漢族社会の間の疑心と不信の巨大な亀裂が日増しに深刻化し、憎悪の感情が広がっていると深刻に感じている」(イリハム・トフティ氏)。ウルムチ騒乱発生日の7月5日を「民族和解の日」と定め、夏休みを利用してお互いに自分の子供を相手民族の家庭で生活させ、将来の世代で民族間の友情を深めることを計画したが、挫折を余儀なくされた。同氏が国家分裂を主張していなかった証左として弁護人も訴えたが、裁判所は受け入れなかった。(城山英巳・時事通信北京特派員)

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2013年10月28日に起きた「天安門車両炎上事件」では、中国政府が、ウイグル族によるテロであると断定しました。この事件の背景には、いったい何があったのでしょうか。

2013年10月28日に起きた天安門車両炎上事件(写真:Newscom/アフロ)

はなから「テロ」としか報じない中国メディア
この事件の背景について一切触れず、「テロ」であると断定することで、断固たる措置への障害を最小限にしたいという党中央の意向を反映してのことであろう。そのことは、海外メディアが伝えるような実行者の個人的な利害が原因であることや、外交部がこの事件と「東トルキスタン・イスラム運動」との関連に言及したことなどを『人民日報』が報じていないことにも表れている。(佐々木智弘・防衛大学校人文社会科学群国際関係学科准教授)

新疆ウイグル問題 天安門車両炎上事件を利用する中国
ウイグル問題については、他の少数民族問題とは違う面があります。それは新疆の地政学的位置です。新疆は中央アジアに向かう中国の門戸であり、かつて日本がアジア大陸本土に進出したころの満州に当たる戦略的地位にあります。中国としては、戦略的目的から、その開発、特に漢民族中心の開発を強化したい立場にあります。(岡崎研究所)

地政学的な違いについては、日本経済新聞の「絹の道は天然ガスの道 中国がウイグル支配強めるワケ」(2014年7月27日)という記事でも触れられています。

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ラビア・カーディル世界ウイグル会議議長(写真:筆者提供)

イリハム・トフティ氏が「民族和解の日」と定めた7月5日は、2009年にウルムチ騒乱が発生した日です。この事件の直後に、ラビア・カーディル女史が騒乱の実態について語っています。

【カーディル議長 独占取材】ウイグル弾圧の実像
「ウルムチでデモが起きた7月5日、日没までの間だけで、約400人のウイグル人が殺されたという情報を得ています」(ラビア・カーディル女史)。中国共産党が過去60年にわたって行なってきたウイグル人への弾圧のおぞましさは筆舌に尽くしがたい。イスラム教の信仰に対する弾圧はいうに及ばず、暴行や虐殺、不当逮捕、強制労働、拷問、公開処刑、女性への性的暴行、子供や女性の拉致、強制堕胎等……。こうした行為が今日も行なわれているとの報告は枚挙に暇がない。(有本 香・ジャーナリスト)

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